Rain or Shine〜義弟だから諦めたのに、どうしたってあなたを愛してしまう〜

 ようやく顔を上げた瑞穂は、部屋の中を見渡す。ツインのベッドと二人用のテーブルとイス、それから机が置かれただけのシンプルな部屋。ドアのそばの収納にはスーツのジャケットが掛かっており、キャリーバッグが置かれているのも見えた。

 恵介はベッドに腰掛け、瑞穂に隣に座るよう促す。戸惑いながらも瑞穂は恵介の横に座った。

「あの……出来れば早く帰りたいの……。夕飯の支度もあるし、それに……」
「残念だけどそれは無理だよ」
「……どういうこと?」
「瑞穂をあの家には帰さないということ。しばらくここで生活してもらうよ」
「そんなの困る! だって私が帰らなかったら……」

 掴みかかった瑞穂に、恵介は優しく微笑んだ。

「お義兄さんが怒る? 大丈夫。俺から連絡しておくから安心して」
「そ、そんなのダメよ! そんなことしたら……」
「大丈夫だから。瑞穂は何も心配しなくていい。俺はこれから買い出しに行ってくるけど、この部屋から出たらダメだよ。もし出たら、全てを母さんに話すから」
「やめて! お母さんには言わないで!」
「じゃあ部屋から出ないこと。わかった?」
「……わかったわ」
「よし。じゃあ少し休んでて。すぐに戻るから」

 瑞穂が頷くのを確認し、恵介は部屋から出ていった。
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