Rain or Shine〜義弟だから諦めたのに、どうしたってあなたを愛してしまう〜
* * * *

 車を返却してから、二人は夕飯を食べるためお店に向かう。二人の間は兄弟としての距離感を保ちながら、会話を楽しんでいた。

 夕食は恵介のリクエストで味噌煮込みうどんになった。ひつまぶしの店はどこも混雑していたので、有り難い提案だった。

「ひつまぶしとかよく食べる?」
「それがね、観光客でごった返してるから、地元の人間は全然食べないよ」
「そうなんだ。意外だった」

 味噌煮込みうどんの有名店だったが、やや郊外にあるため、店に入るとすぐに席に案内された。

 二人は味噌煮込みうどんとおでんを注文し、ようやくホッと一息つく。

「ああ、やっぱりちょっと疲れたな」
「運転お疲れ様。でも私も初めての場所だったから楽しかったよ。あそこって朝ドラの舞台にもなってたよね。恵介が連れて行ってくれなかったら、たぶん一生行かなかったかも」

 山城跡なんて、お城が好きな人じゃないとなかなか行かない場所だもの。崇文の選択肢にはないはず。とはいえ、付き合っていた頃だって近場ばかりだった。この半年は家から出ることすらなかった。

 実家にいた時は毎週のように家族で出掛けていたし、長期の休みには旅行にも行った。私はそんな家族の在り方が好きだったし、自分もいつかそんな家庭を築きたいと思っていたのに、現実はかけ離れてしまった。
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