Butler and Isla
少女ーーージュリエット・ダプシェはダプシェ家の一人娘であり、珍しい紫の目を持つことから貴族の世界では有名な存在である。

「ハァ……」

空を自由に飛んでいく二羽の白い鳩を見て、ジュリエットの口からため息が漏れる。厳格な父親に見られていたら、間違いなく叱られているだろう。貴族の女性はため息など吐かず、常に微笑んでいなくてはならないのだ。

「自由になりたい……」

その後に彼女が呟いた言葉は、朝が来たことを告げる教会の鐘によってかき消されてしまう。教会の鐘が鳴り止んだと同時に、部屋のドアがノックされた。

「ジュリエットお嬢様、失礼します」

部屋にメイドが数人入り、ジュリエットの身支度を始める。ネグリジェを脱がされ、コルセットを締められ、リボンやフリルで飾られた豪華なドレスを着せられ、髪をとかされていく。その間、ジュリエットは着せ替え人形のようにジッとしているのだ。

「お嬢様、いよいよ明日ですね」
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