エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
澄夏がなにか言うのを防ぐようなタイミングだ。〝ごめんなさい〟と言いかけた言葉をのみ込み、メニューを受け取った。

「……私は、クラブハウスサンドにしようかな」
「了解」

一哉は店員を呼び、それぞれが選んだものとコーヒーのお代わりをオーダーした。

料理が届くまでは少し気まずかったが、食事を始めると手持無沙汰ではない分気楽になる。

顔を合わせたばかりの頃は緊張感に溢れていたふたりの間の空気も、落ち着いたものになってきていた。

澄夏は、離婚には断固反対と言う一哉の反応に驚きながらも、どこかほっとしていた。

改めての話し合いにも前向きな気持ちになっている。

(ここでは話せない内容ってどんなことだろう)

彼の内面をもっと深く聞かせてくれるのだろうか。

考えてみれば、婚約時代からお互いの深いところをさらけ出し合った記憶がない。

澄夏は政略結婚だからと彼に遠慮している面があり、それは今でも続いている。

真咲に関係を仄めかされたときや、家を出る決意までしても理由を言えなかったのは、彼と心が繋がっている自信がないからだ。

だけどやはりそれでは駄目なんだろう。
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