エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
慌てる澄夏の代わりに一哉が上掛けを引っ張る。体を隠せてほっとしたのも束の間で、一哉は澄夏の頬に触れて顔を寄せる。

端整な顔が迫り、澄夏は鼓動が乱れるのを抑えられない。

(一哉さん、どうしたの?)

昨夜からの彼の態度がいつもと違うような気がして仕方ない。

夫婦の距離が突然縮まったような気がして戸惑う。

別れを決意しているから敏感になっているのだろうか。

どちらにしても澄夏は、今でも夫に見惚れて平然とはしていられなくなる。

照れているのが態度で分かるのか、一哉がくすりと笑ったのが分った。

「今日はゆっくりしていて」

甘く優しい声が耳元で囁く。

(どうしてこんな声……)

「で、でも今日実家に帰ろうと思ったから」

「ああ、そうだったな」

一哉の声があからさまにトーンダウンした。

「一哉さん、あの今日じゃない方がいい?」

彼が不機嫌になったような気がしてそう聞いた。

「いや、岩倉家が今大変な時期なのは分かってる。帰ってお義父さんたちのフォローをした方がいい」

「あ、ありがとう」

「でも寂しいな」

「えっ?」

澄夏の心臓がドクンと跳ねた。

(今、寂しいって言った? まさか……)
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