エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
一哉がそんな台詞を口にするはずがない。

彼は弱音を吐くタイプじゃないし、それに澄夏がいてもいなくても生活は変わらないのだし。

(それに南雲さんもいる)

だけど、もしかして彼も離れがたく感じているのではと、都合の良い期待を抱かずにはいられない。

彼と離れると決めたのに、早くも心が揺らぎそうになっている。

(ああ、一哉さんの本心が分かったらいいのに)

じっと見つめても彼の心を読むことは出来ない。

一哉が顔を少し傾けて口付けてきた。

朝からこんなことをするなんて、初めてだ。

驚きながらも、彼と触れ合いたくて澄夏は目を閉じて受け入れる。

(一哉さんが好き……)

そんな思いが溢れ、澄夏も積極的にキスに応える。

「んっ、んん……」

爽やかな朝の光りが差し込む寝室に、くぐもった澄夏の声が響く。

背徳感を覚えながらもやめられない。

澄夏の背中に回る一哉の腕に力がこもり、抱き寄せられた。

ふたりの間には隙間がなくなり、貪るようなキスを繰り返す。

頭の中は真っ白になり、彼のこと以外は考えられなくなる。

お互いの体が離れたとき、澄夏の視線は定まらず、ぼんやりと目の前の夫を眺めていた。
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