エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
しわがれた声の返事はすぐにきたので、引き戸の扉を滑らせ中に入る。

父は大きなデスクの前のリクライニングチェアに座っており、澄夏を見て目を細めた。

「帰ったのか」

「お母さんが心配だし、しばらくこちらで過ごそう思って」

澄夏の言葉に父は眉を上げた。

「あいつは喜ぶだろうが、一哉君を放っておいて大丈夫なのか?」

「ちゃんと了承は得たから心配しないで。それより、この前電話でも話したけど、お義父さまに連絡してくれた?」

「ああ……」

父が言葉を濁した。これは電話をしていないということだろう。

澄夏は内心溜息を吐いた。

「気が進まないのは分かるけど、お義父さまも心配しているから……」

「分かってるから、お前は口出ししなくていい」

父の口調に苛立ちを感じ、澄夏はそれ以上の言葉をのみ込んだ。

(こういうところ、全然変わってない)

元々ワンマンな性格の人だった。長い間人に指示する立場だったというのもあるかもしれないけれど、もう少し謙虚にしないと周囲の反感を買うだけなのに。

娘の忠告を素直に聞いてくれる人ではないから困るのだ。

「お前はなにか言われたのか?」
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