エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
澄夏は一哉が家を出てしばらくしてから、ベッドを出て身支度を始める。
通常の清掃に加えて、冷蔵庫の中も綺麗にしてから、昨日のうちに用意しておいた荷物を持って家を出た。
東京駅から電車で二時間程に位置する地方都市が、澄夏の生まれ育った町だ。
駅を降りると、懐かしい景色が目の前に広がり、いつ来てもほっとする。
実家まで駅から徒歩で二十分程かかる道のりを、普段は散歩がてら歩いている。しかし今日は荷物が多いのでタクシーで向かうことにした。
乗り降りする際のドアの音で気付いたのか、玄関で澄夏が子供の頃から岩倉家で働いてくれている家政婦の中元和子(なかもとかずこ)が出迎えてくれた。
「澄夏さん、おかえりなさい。今日は随分大荷物ですね」
中本は澄夏が玄関に運び込んだキャリーケースを見て目を丸くする。
「今回は少し長めに居ようと思って」
「それは旦那さまもお喜びになりますよ」
嬉しそうな和子に、澄夏は微笑んだ。
「お父さんはいる?」
「はい。書斎の方に」
「ありがとう。挨拶してきますね」
澄夏はキャリーバッグを結婚後もそのままにしてある自室に運び、それからすぐ書斎に向かった。ノックをして声をかける。
「お父さん、澄夏です」
「入りなさい」