エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
かけられている服は全て冬服だと気が付いたのだ。

四月下旬の今、使いそうなジャケットなどが見当たらない。彼女がよく着ていたベージュのトレンチコートもない。

一時的に実家に帰るだけにしては、持っていく服の数が多すぎやしないだろうか。

(まさか……帰ってくるつもりがないのか?)

そんな考えが脳裏をよぎる。

先ほどの電話での態度からも、一哉との距離を置きたい様子が伺えた。

そもそも澄夏がまともに連絡をしてこない時点でおかしかったのだ。

考えれば考える程、間違いがないように思えてきた。

(帰省じゃなくて別居? そんなバカな!)

ふと最悪の事態が脳裏をよぎり、一哉は頭を抱えてベッドに座り込んだ。

いったいなにが原因なのだろうか。朝帰りの件で怒っていたとしても、すぐさま別居になるとは思えない。

(……もしかして)

一つの可能性に思い至たりはっとしたとき、スマートフォンが着信を告げた。

(澄夏?)

急ぎ手に取り画面を見たが、表示されているのは母の名だった。酷く落胆しながら応答する。

「はい」

《あ、やっと出たわね》

「母さん……もう少しボリューム抑えてくれっていつも言ってるだろ?」
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