エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
だけど悪い気はしない。
一哉は軽い足取りで周囲の玉殻を全て拾い集めてから自宅に帰った。


澄夏に会ったのはそれが最後。

偶然見かける機会もなく季節は流れ春になった。

一哉は国内最難関と呼ばれる国立大学に合格し上京した。

経済産業庁に入庁して官僚として日々忙しくやりがいを持って働いていた。

あの夏の神社で澄夏が励ましてくれた出来事は学生時代のよい思い出だったが、普段思い出すことはなくなっていた。


しかし思いがけなく再会の日は訪れた。

あの日から約十年後。父が見合話を持ち掛けて来たのだ。

仕事が充実していた時期だったこともあり、見合いどころか当分の結婚も考えていなかったが、相手が代議士岩倉通成の令嬢と聞いて気が変わり話を受けた。

再会した彼女は思い出の中の小さな女の子ではなく、二十四歳という年齢相応の美しい女性に成長していた。

女性としては平均的な身長であるものの、骨格が華奢なせいか小柄に感じる。

初めて会ったときとは違い、大人の女性の振舞いが身についており落ち着いていたが、清楚な雰囲気はあの頃のままで、淡い色味の着物姿がよく似合っていた。
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