エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
澄夏はあの夏の日の出会いを覚えているのだろうか。

顔見知りとしての態度でいいのか直前まで迷った。久しぶりと言うべきか。

「須和一哉です。本日はよろしくお願いします」

結局、岩倉代議士の目を気にして無難な挨拶で済ませた。澄香があとであれこれ聞かれたら大変だろうと思ったのだ。

「あ……岩倉澄香です。よろしくお願い致します」

澄香は礼儀正しく頭を下げた。残念ながら昔の出来事を覚えていなそうだ。

初対面の相手への緊張が顔に出ている。ただ遠慮がちな態度で口数も少ないながらも、嫌がられているようではなくほっとした。


両家の親同士の会話など一通り済ませた後は、ふたりだけの時間。

ホテルの見事な庭園を歩きながら、澄香に話しかけた。

「澄夏さんは大学を卒業後、植物園で働いているそうですね」

「はい」

「それは岩倉先生の勧めで?」

「いいえ。学生時代にボランティアで何度か訪れて興味を持ったんです。就職を決めたとき父はあまり良い顔をしませんでした」

澄香はそう言いながら、眉をひそめる。

「反対されて喧嘩になったんですね。意外です」

彼女は強い権力を持つ父親に従順なイメージが有ったから。
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