エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
さっきのバイブ音はタクシー会社からの連絡だったとわかり、しゅんと肩を落とした。
トラブルの対応に追われている龍臣さんを思うと、これ以上お酒を飲む気にはなれない。
「すみません。私はこれで帰り……」
「食事が終わったらホテルのバーに行くように兄に頼まれているので、美桜さんをこのまま帰すわけにはいかないんですよ」
彰仁さんが私の言葉を遮り、イスから素早く立ち上がる。
「わかりました。じゃあ、少しだけ」
頼まれたと言われたら断れず、彰仁さんに続いて席から立って店内を進んで外に出る。
暖房が効いていた室内とは違い、屋外は吐き出す息が白くなるほど冷え込んでいる。
この場に龍臣さんがいたら『寒いだろ?』と言って、肩を抱き寄せてくれるはずなのに。
彼がいない寂しさを胸に抱えて、レストランの前に停車しているタクシーに乗り込んだ。