クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「もう一つ。アーロン・リーはSNS上で、『RINKA.F』というユーザーと頻繁にやり取りしていた。これは、管理官自身が、香港警察から情報提供を受けたデータにあったじゃありませんか」


一瞬、会議室内がざわついた。


「この SNSアカウントは、藤崎凛花のメールアドレスを使って、三年前に開設されたことも確認が取れています」


神田は顎を突き出し、斜めに見下ろすような視線を投げてくる。
俺も眉間に皺を刻み、彼を見据える目に力を込めた。


「二人のやり取りについては、現在調査中です。双方とも鍵アカでして。ダイレクトメールでのやり取りも含めて、運営企業のアメリカ本社に開示請求中で……」


俺は彼の言葉の途中で額に手を遣り、かぶりを振った。


「神田。お前はたった今、事務所のセキュリティ対策は脆弱だったと言ったな。それなら所内はもちろん、所外の人間でも、彼女のメール情報を入手して、アカウントの開設ややり取りが可能だったということだ」


俺が口を挟むと、それまで饒舌に話していた神田がグッと口ごもった。


「現に、香港側の企業メールはハッキングされていた。日本のSNSのやり取りを、アカウントの本人が行っていたと、何故断定できる?」


俺は込み上げる苛立ちを、ハッと浅い息を吐いて堪える。


「藤崎六郎事務所の捜索令状を取るためだけに、藤崎凛花をクロに持っていこうとするのはやめろ。先入観や思い込みに支配された強引な捜査は、断固慎め」
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