クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
開始から四十分。
最後は神田が反論を失って黙る形で、捜査会議は終わった。
ゾロゾロと出入口に向かう刑事たちを見送り、俺は席を立って会議室を出た。


昨夜から一睡もしていない。
頭の芯がズキズキして、目頭を指で押して痛みを抑えた。
そうして一歩踏み出し、ピタリと足を止める。
廊下の先で、純平が壁に背を預けて凭れかかっていたからだ。


「お疲れ。二課にしちゃ珍しいな。随分と熱い論戦だったようで」


眉尻を上げたドヤ顔が鼻につく。
恐らく、先に出ていった刑事たちが話すのを耳に挟んだのだろう。
皮肉っぽく揶揄する口調に、苛立つ心を逆撫でされたが、俺はここでも溜め息で紛らわせた。


「疑われているのは俺の妻だ。熱くもなる」

「本気で疑ってかかってるわけじゃないだろ。濃い目のグレーあたりまで持っていければ、ラスボスの根城に踏み込む理由が作れる」


わかったような顔で畳みかけられ、ピクッと眉尻を上げる。


「妻をスケープゴートにされて、黙ってられるか」

「まあ、暴れたい気持ちはわかる」


俺が返事に秘めた棘には気付いただろうに、純平はあっさり同意して頷いた。
その反応が意外で、俺の毒気も削がれる。
彼の前では、今でも大人気なくムキになる自分が忌々しく、そしてきまり悪い。
< 142 / 213 >

この作品をシェア

pagetop