クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
――凛花が一人で考えたことか?
いや、違う。
恐らく、職場の弁護士たちに相談したのだろう。


「……凛花。お前、仕事に行ったのか?」


俺が顎を引いて問いかけると、彼女はわずかに怯んだ仕草を見せる。
そして。


「ごめんなさい。休めって言われたのに」


肩も首も縮めて、謝罪に転じた。
俺は、「いや」と首を振る。


「職場の先生たちが親身になってくれたのなら、よかった」


ホッと息を漏らす俺に、凛花が目を丸くした。


「……なに」

「い、いえ。怒られるかと思っていて」

「何故」


俺は自嘲気味に口元を歪ませてから、ベッドの方に進み、ドスッと腰を下ろした。
凛花は一瞬躊躇ったものの、思い切った様子で俺の前に歩いてくる。
天井の明かりを浴びた彼女の影が降ってくる。


『何故』、ではないか。
結婚記念日の夜のことも、仕切り直しについても話せていない。
こんなことになってしまって、うやむやになったままだ。


一度は家を出ようとした凛花が、今俺をどんな目で見ているか……知らなきゃいけないんだろうが、知るのも怖い。
俺は彼女の返事を待たずに、黙って俯いた。
弱気に陥る自分の心を払拭しようと、かぶりを振って……。
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