クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
キビキビとした早口な指示の途中で、デスクの電話が鳴った。


「っ……ちょ、ちょっとごめん」


私は腰が浮きそうになるのを堪え、必死に平静を装って電話に出た。


『瀬名さん? 大丈夫かい?』

「……はい、所長」


受話器を通して届いた声が本当に所長だったから、無意識にホッとして胸を撫で下ろす。
私は刑事さんの指示通り、電話で呼び出された体で事務室を出た。
所長室に入ると、所長と刑事さんがタブレットを注視していた。


「やはり、デスクの下のバッグが気になるようですね」

「刑事さん、彼、なにか盗もうというのでは? さっさと捕まえた方が……」

「それならそれで、現行犯として逮捕します」


眉根を寄せる所長に構わず、刑事さんは落ち着き払っている。
私は二人の後ろに回って、怖々とタブレットを覗き込んだ。


鮮明とは言えない隠しカメラの映像の中で、和人君は私のバッグに目を凝らしていた。
一瞬、辺りを気にするように、事務室内に目を走らせた。
そして、バッグを引っ張り出して逆さにして、床に中身をぶちまけた。
財布にパスケース、化粧ポーチにハンカチ、文庫本……女性のバッグの中身としてはごく普通なものが、床に散らばる。
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