クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
五歳児の頭の中では、時代劇の悪代官のイメージあたりが重なったのだろう。
『お兄ちゃんは、お役人さん?』
道着で竹刀を振るっていた俺に、怯えた目をして訊ねてきた。
俺は、いずれは彼女が怖がる『お役人さん』になる。
瀬名の名を持つ男である以上、それは生まれた時からの決定事項だ。
『大人になったらそうなる』
わりと真顔でそう返すと、繋いでいた小さな手がびくんと震えた。
『……凛花、悪いことしないから、捕まえないでね』
半泣きの涙目で見上げられ、俺は思わず苦笑した。
その後も、瀬名本家の催しで何度か見かけた。
臆病なのか、それとも本気で怖がられたのか、いつも両親の足にまとわりつき、背中に隠れている。
残念ながら、俺は子供に愛想よく声をかけられる男ではなく、自ら近付くことはなかった。
警察庁に入庁してからは、研修や出向で東京……そもそも日本にいることが少なく、十年以上、凛花の姿を見ていない。
汚れを知らないピュアで可愛い、怖がりな女の子――。
俺の中で、凛花はそのイメージで止まったまま。
日々激務に追われ、彼女のことは頭から抜け落ち、思い出すことも考えることもなかった。
それが一年半前、他ならぬ純平から彼女の噂を耳にした。
『うちの兄貴も、そろそろ御用らしいぞ』
なんのことかと思ったら、梗平さんに持ち上がった縁談の話だった。
『お兄ちゃんは、お役人さん?』
道着で竹刀を振るっていた俺に、怯えた目をして訊ねてきた。
俺は、いずれは彼女が怖がる『お役人さん』になる。
瀬名の名を持つ男である以上、それは生まれた時からの決定事項だ。
『大人になったらそうなる』
わりと真顔でそう返すと、繋いでいた小さな手がびくんと震えた。
『……凛花、悪いことしないから、捕まえないでね』
半泣きの涙目で見上げられ、俺は思わず苦笑した。
その後も、瀬名本家の催しで何度か見かけた。
臆病なのか、それとも本気で怖がられたのか、いつも両親の足にまとわりつき、背中に隠れている。
残念ながら、俺は子供に愛想よく声をかけられる男ではなく、自ら近付くことはなかった。
警察庁に入庁してからは、研修や出向で東京……そもそも日本にいることが少なく、十年以上、凛花の姿を見ていない。
汚れを知らないピュアで可愛い、怖がりな女の子――。
俺の中で、凛花はそのイメージで止まったまま。
日々激務に追われ、彼女のことは頭から抜け落ち、思い出すことも考えることもなかった。
それが一年半前、他ならぬ純平から彼女の噂を耳にした。
『うちの兄貴も、そろそろ御用らしいぞ』
なんのことかと思ったら、梗平さんに持ち上がった縁談の話だった。