秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 私が、アズフィール様の想像する女性像とずれがあることは瞭然だ。けれど、アズフィール様もまた、私が想像する王子様像とは違うように感じた。『王子様』としか認識していなかったアズフィール様の人となりに、畏れ多くも少し興味を抱いた。
「アズフィール様。その……荷物をありがとう」
 私はアズフィール様の隣に並び、素直に礼を告げた。
「……ああ」
 アズフィール様は、頭ひとつ分以上高い位置からチラリと私を見下ろして、ぶっきらぼうに頷いた。その頬が朱色に染まっているように見えたのは、きっと大地を明るく照らす陽光の加減だろう。
 こうして並んでみると、改めてアズフィール様の鍛えあげられた長身と、美しい顔立ちに気づかされた。短く整えられたブラウンの髪は清潔感があり、涼し気なグリーンの瞳と相まってとても爽やかな印象だ。秀でた額にシャープな頬、彫りの深い顔立ちは、一流の芸術家が手がけた精緻な彫刻のようにも見えた。
 私はしばし、彼の美貌に見入った。
「俺の顔になにかついているか?」
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