秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 私はその晩、いつになく安らかな気分で眠りについた。そうして翌日、重たい足を引きずる同級生らを横目に、私はひとり軽い足取りで登校した。
 前日の疲れが露と消えてしまったのだから、お灸というのはすごい。しかも体ばかりか、ここ最近どことなく晴れなかった心まで軽くなっている気がするのだから、本当に不思議だ。
 その日から、私は父の治療院を訪れるお客さんを注意深く見るようになった。すると、どことなく暗い顔をしてやって来たお客さんたちが、施術後にはみんな笑顔になっている。
 その足取りは明らかに軽くなっているし、見送る父に礼を言って帰るその表情は明るい。
 鍼灸は医療行為じゃないから、症状が根治するわけじゃない。でも、確実に心身にアプローチして辛さを癒す。
 だけど癒しをもたらすのは、鍼灸マッサージの技術だけじゃない。施術者との対話やリラックスできる空間とか、そういったものをひっくるめて癒しとなれるのだろう。
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