秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「よかった。サークレットを着けるには前髪は下ろさない方が見目がいいわ。それに、もしかしたら今日は剣を振るうこともあるかなと思ったんだけれど、正解だったようね」
 私はホッと安堵の胸を撫で下ろした。
 毎朝の頭髪のセットは、専属女官として私が行う役目のひとつ。これが三回目になるが、これはなかなか慣れない。
 アズフィール様は、『適当に櫛を通すだけでいい』だなんて言うけれど、役目として行うからにはそんないい加減なことはできない。とはいえ、美容関係にはとんと疎い私である。その日の公務の予定に応じ、相応しいように髪を整えるのは、なかなか骨が折れた。
 それに、本音を言うと慣れない理由はもうひとつある。アズフィール様の髪に触れると、妙に胸が騒いで落ち着かなくなるのだ。鍼灸の施術をする時は、頭髪どころではなくもっと密着して直接素肌に触れているというのにおかしな話ではあるが、実際そわそわしてしまうのだから仕方ない。
 とにかく、私はこのお役目に、毎朝あっぷあっぷしていた。
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