秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 けれど、アズフィール様にはその傲慢さがない。アズフィール様は決して下品ではないのに、私が知るどんな貴族男性よりも寛容で柔軟だ。最も高貴な生まれのアズフィール様の方が話が通じてしまうという、この不思議……。
「わかったわ。終わったら、お店の方に回るわね」
 ……あら? そう言えば、どうしてアズフィール様は私が『馴染みの女将さん』と言っただけで、行き先が小間物屋だとわかったのかしら……。いえ、なにかのついでに話したのかもしれないわね。
 食事時、アズフィール様はなにが楽しいのか、日常のことや鍼灸のこと、いろいろと尋ねてくるのだ。
「朝食にしよう」
「ええ」
 そもそも、冷静に考えると専属女官が主である王子様と毎朝一緒に朝食を取るというのも、おかしなお役目だ。だけど、執事長のアルバートさんをはじめ、王宮内で働く他の女官や侍従らがこれを訝る様子はなく、食堂に行けば当たり前のように私の席が用意されている。
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