秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 見るともなしに店内を眺めていると、王都中心部に軒を連ねる貴族御用達の高級店とはまた違った趣深い品々が並んでいた。俺は、髪留めが展示された棚の前で足を止めた。
 メイサは肩下まである栗色の髪を、いつも後ろでひとつに結んでいた。緩くウェーブした艶やかな髪は、下ろせばきっと可愛らしいだろうに。もったいなく感じた俺は、メイサに『なぜ髪を下ろさないのか』と尋ねた。彼女から返ってきた答えは、鍼灸の施術をするのに衛生面や安全性からそうしていると、こうだった。
 納得すると共に、彼女の鍼灸にかける思いの強さを垣間見た気がした。不思議なことに、それ以降はキチンと纏められた髪がもったいないどころか、逆に彼女の清楚な美しさを際立たせているように感じていた。
 ……ほぅ。花の形の木彫りか、洒落ているな。
 俺は多く並んだ髪留めのひとつに目を留めた。ダークウォルナットの落ち着いた色味の木彫り細工の髪飾りは、彼女の髪によく映えそうだった。
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