秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 そっと手に取ると、小さな細工ながら角も丁寧に面が取られており、表面の感触がとても滑らかだった。これなら、どこかに引っかかったりもしないだろうし、施術の邪魔にはならない。
 俺は店主に会計を頼み、買った髪飾りをシャツのポケットに入れた。そうしてしばらく店内の他の品を眺めていたら、ふいに目線を感じて、顔を向けた。
「メイサ」
 俺が呼びかけると、メイサはなぜか急いだ様子で、俺の腕を取って速足で店を出た。
 突然腕を取られたことに驚きと、それを上回る喜びが胸にあふれた。少し進んだところで、メイサがハッとしたように腕を解いてしまうのが、ひどく寂しかった。俺は街の混雑を大義名分にし、今度は自分から彼女の手を取った。
 メイサと並んで通りを歩きながら、俺はこの時間が永遠に続いたらいいのにと思っていた。
 そんな俺の思いを余所に、メイサは慣れた様子で街路を進み、工房と思しき建物の前で足を止めた。
 ……針磨工房、なるほどな。
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