秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 入学直後に、まさかの父が急死。さらに父の死後、保険では賄いきれない多額の借金が発覚した。私が継ごうと夢見ていた治療院は畳み、思い出深い土地と家も売却せざるを得なかった。
 私は専門学校の授業を夜間部に切り替えて、昼間はアルバイトをして学費を捻出した。必死に食らいつき、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の三つの国家試験に合格し卒業に漕ぎつけた。
 ……だけど、一緒に喜んでくれる父も、私が継ぎたかった治療院も、もうなかった。
 鍼灸が嫌いになったわけじゃない。だけど、これからは安定安心第一でいこうと思い、大手エステサロンに就職した。ところが、私が就職したサロンの勤務実態はあまりに過酷だった。
 お客様の笑顔を励みに店長として奮闘するも、本部から課される重いノルマと休日なしの長時間労働、なにより店舗スタッフらの調整に苦しめられた。連日スタッフから寄せられる『客を取られた』『シフト優遇だ』といった言葉が耳から離れなくなって、うまく眠ることができなくなった。
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