秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官（※その実態はお妃候補）に任命されました！

　そうして深夜の店舗でシフト組みに唸っていた私は心不全を起こし、『こんな人生もうやだ……。もし次の世があったら、絶対自由気ままに生きる』と言い残して死んだ。
　奇しくも、心不全というのは父と同じ死因だった──。

　回想から意識が今に戻る。
　前世のことを思い出すと、死の瞬間に感じた後悔と怒りが当時の熱量を保ったまま蘇り、胸が狂おしく締め付けられる。
　後悔は、もちろん父のことだ。父に会えたら、私は前世で伝えられなかった『大好きだよ』と『ありがとう』を伝えたい。ついでに高校生になっても皿の一枚も洗わず、毎日当たり前のように父に作ってもらった弁当を持ち、父に洗ってもらったパンツを穿いて過ごしていた甘ったれの自分を詫びたい。
　一方で、怒りの感情とその対象については実に複雑だ。父の死後、面倒事は御免だとばかりに蜘蛛の子を散らすように逃げていった親戚たち、ブラックな体質の会社やわがまま放題の店舗スタッフに対してはもちろんのこと、父に対しても怒りの感情があった。