秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 私が身支度を整えて大広間の前に到着すると、中から楽団が奏でる音楽と人々が談笑する声が漏れ聞こえてくる。
 ……やっぱり、もう始まってしまっている。
 アポロンが王宮までひとっ飛びしてくれたおかげで、もしかしたら夜会の開始に間に合うかもしれないと思ったのだが、慣れないメイクと髪のセットに手こずったのが悪かった。
 私は普段、化粧をせず髪もひとつ結びで過ごしており、盛装は苦手中の苦手だった。とはいえ今日の夜会にはアズフィール様のパートナーとして参加するのだ。彼に恥をかかせるわけにはいかなかった。奮闘の結果、なんとか体裁は整えられたと思うのだけど……。
 ……なんにせよ、先にひとりで入場させてしまって、アズフィール様には申し訳ないことをしたわ。
 横で控えていた侍従が、私に気づくと一瞬だけハッを目を見開いた。なんだろう?と思ったけれど、侍従はすぐにスッと表情を引きしめて、重厚な扉に手をかけながら告げる。
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