秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「飲んでごらん。君の舌に現実の美味しさを伝えてくれる」
 うっとりと漏らすと、アズフィール様がグラスを掲げた。
「ええ。いただきます」
 私もグラスを掲げ、そしてふたり同時にグラスをあおいだ。
 ゆっくり含むと、繊細な風味が口内を満たし、シュワシュワと心地よい刺激を残してスゥッと喉に消えていく。嚥下して顔を上げたら、アズフィール様が優美に微笑んで私を見下ろしていた。
 トクンと鼓動が跳ね、酒精の影響とは別のところから体温が上がったのを感じた。
 喉を通っていったシャンパンの刺激と芳醇な味わいは、たしかに現実のもの。けれど、夜会の中心で正装した美貌の王子様とシャンパングラスを傾けるこの瞬間は、やはり夢のようだと思った。
 少しふわふわとした心地のまま、アズフィール様と共に美食に舌鼓を打ったり、音楽に耳を傾けたりしながら、夜会の夜は更けていった。

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