秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 ……だが、ひとつ不可解なこともある。
 俺にとって、メイサ以外の女との接触はこの上なく不愉快で不快なもの。だからと言って、それらの症状は物心ついてからずっと付き合っているもので、理性で耐える術は身についていたはずなのだ。
 体が無意識のまま剣を抜いて排除に走ったのは、後にも先にもあれが初めて。彼女の手があまりにグロテスクで、不快で耐え難かったのだ……そう。なぜか、あの指先──長い爪に塗られたどぎついほどの赤が……っ、クソッ! 思い返すのも忌々しい! 虫唾が走る!!
 俺は緩く首を振り、メイサとの幸福な時間に割り込んで脳内を浸食する禍々しいほどの赤色を振り払った。
「アズフィール様、どうかした?」
「いや、なんでもない」
 その時、楽団の奏でる音楽が一旦止んだ。
 僅かな小休止を挟み、この後、歓談と立食を楽しんでいた会場はダンスタイムに切り替わる。
「ダンスタイムが始まるな。踊ろう」
 俺は持っていた皿を給仕に渡し、メイサの手を取った。
「あっ」
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