秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「夜会開催の経緯は当然把握している。だが、君と踊らないことが、なぜ君を蔑ろにすることになるのかわからんな。誰と踊るかは、すべて自由意志だ。俺はパートナーを同伴している。彼女以外とは──」
 踊らない、とそう続けようとしたのだが、横から肩をポンッと叩かれて振り向いた。
「アズフィール様、踊ってきてください。私、実はまだ少し息があがってしまっていて。ここで息を整えていますから」
 メイサはサイドテーブルに一旦置いたグラスを再び取り上げて、こんなふうに口にした。
「だが」
「さっき言った通り、ダンスは初心者なんです。もう少し、休憩させてください」
 メイサはふわりと微笑んで、グラスを持つのと逆の手で、鼓舞するようにトンッと俺の背中を押した。柔らかなその瞳が、まるで「今は堪えて、頑張っていってらっしゃい」とでも言っているようで、彼女には俺の心の内まですべて見透かされているような気すらした。
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