秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 鞄を床に置き、手足を投げ出して仰向けに寝転がる。カーテンを開けたままの窓から綺麗な星空が覗いていたけれど、心の慰めにはならなかった。
 アズフィール様があんなにやわらかな表情を浮かべて、『紹介したい』と語る人物。『美容鍼に興味』というくらいだから、相手というのは当然女性なわけで……。
 掃除のために使用人が入室するのを除き、これまでアズフィール様が私以外を部屋に入れているのを見たことがなかった。もともとアズフィール様は女性が苦手で、私が一緒に夜会に参加した後には『君を伴ったおかげで女たちが寄って来なくなって助かった』と嬉しそうに話していたのだ。
 そんな調子だったから、彼に親密な女性が存在するなんて想像もしなかった。
 自分だけがアズフィール様の特別であるかのように勝手に勘違いして、勝手に落ち込んで……。私、いったいなにをやっているんだろう。
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