秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 目の前の青年がウォールド王国の王子様と知り、驚きが隠せない。
 パチパチと目を瞬く私に、ヴァーデン王子はニッコリと微笑んで頷く。そうして取ったままの私の手をクイッと口もとに寄せ、指先に掠めるみたいにキスを落とした。
「以後、お見知りおきを」
「メイサ! ヴァーデンにはくれぐれも気をつけろ。こいつは女と見れば口説きだすぞ。間違ってもこいつの口車に乗せられるんじゃない」
 アズフィール様が私の手首を引き、ヴァーデン王子に取られていた手がハラリと解ける。
 ……はぁ、助かった。
 手が解放されたことにホッとしつつ、ふと、アズフィール様に手首を掴まれたままでいることには、一切違和感を覚えていないことに気づく。
 ……あら? アズフィール様とヴァーデン王子、年の頃もちょうど同じくらいの男性相手だというのに不思議ね。
 ヴァーデン王子に手を取られていると、落ち着かない感じがした。でも、アズフィール様には、触れられていても居心地悪さがまったくないのだ。この違いはなんなのだろう。
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