秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 そういえば、アズフィール様は最初から『美容鍼に興味を持ちそう』って言っていたっけ。
「美容鍼とはなんです?」
「その名の通り、美容を目的とした鍼の施術です。顔のむくみを取ってフェイスラインを整えたり、血流を促すことで肌のトーンアップができたりします」
「ほう! ぜひ、私にもそれをお願いします」
 アズフィール様の読み通り、ヴァーデン王子はキラキラと瞳を輝かせた。
「わかりました。美容鍼は横になって仰向けで行います。ベッドに移動しましょう」
「こいつは洒落者でな。男のくせに着る物や石鹸など、存外こだわる。一緒に旅して回った時は、あまりの細かさに辟易したものだ」
「アズフィール、あなたがズボラすぎるんです。今の時代、『男のくせに』などと言っていると女性にモテませんよ」
「ハッ。余計なお世話だ」
 奥のベッドに向かいながらも、ふたりは親しげに軽口を叩き合っていた。
 ……ほんとにこのふたり、仲がいいんだな。
「ふたりは一緒に旅をしていたの?」
< 194 / 340 >

この作品をシェア

pagetop