秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「違う……。普段のアポロンはいたずらに目立たぬよう、地上から個体の判別が難しいギリギリ、かつ、乗者に負担をかけない高度を考えて飛べる。後で気づいたんだが、あれはアポロンがわざと地上から判別できる高度を選んで飛んでいたんだ」
「なるほど、賢いアポロンは年若いアズフィール様とヴァーデン王子、ふたりきりの旅を危険と判断したのね」
「やれやれ。過保護なドラゴンもいたものだ。……メイサ嬢、着衣はそのままで大丈夫?」
 ヴァーデン王子がベッドに腰掛けながら問う。アズフィール様はヴァーデン王子の施術に立ち会う気満々のようで、椅子を一脚引き寄せてきて脇に陣取っていた。
「はい。首もとだけシャツを緩めて、リラックスした状態で行いましょう」
「ふむ」
 ヴァーデン王子はふたつほどボタンを寛げて、ベッドに横たわる。
「失礼します」
 私はひと声かけてから、施術中に額や頬に髪が落ちてこないよう、頭部にタオルを置く。
< 196 / 340 >

この作品をシェア

pagetop