秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 その時にふと、王子の豊かな金髪の中に、まばらに栗色の毛が混じっていることに気づく。
 ……あら。昔の私の髪に似ているわ。
 実は、私の髪色は今でこそ栗色だが、幼い頃は金髪だった。それが七、八歳頃から徐々に色の濃い毛筋が混じりはじめ、十歳を迎える頃には全体が栗色になっていた。
 王子の髪は、過渡期の頃の私の髪を彷彿とさせた。
 知り合いの髪結い師さん曰く、成長と共に髪の色が変わるのはそう珍しいことではないらしい。金色の髪をわりと気に入っていたので、当時は少し残念に思ったけれど、今ではこの色が自分の髪色としてしっくり馴染んでおり特段の不満はなかった。
「どうかしたかい?」
「いえ。それでは始めていきますね」
 わざわざ口にすることでもないと思ったので髪についてはなにも触れず、私はさっそく鍼の施術を開始した。
 顔への処置のため、施術中は会話もなく、静かな時間が流れた。
「はい、これでおしまいです。施術はいかがでしたか?」
「……正直、あまりよくわからない」
< 197 / 340 >

この作品をシェア

pagetop