秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 アズフィール様はそんな私の様子にフッと口もとを綻ばせ、短く告げるとすぐに枕に顔を伏せた。ヴァーデン王子はアズフィール様と入れ替わるように空いた椅子にかけ、施術の様子を見つめていた。
 こうして、夜の時間は静かに過ぎていった。


 ヴァーデン王子を紹介された日から三日が経った。
 あの日以降、アズフィール様は衣装や装具の確認、リハーサルなど、立太子の礼を目前に控えてますます忙しく過ごしていた。加えてヴァーデン王子以外にも各国高官らが続々と到着し、その歓待で息つく間もない様子だった。
 相当疲れも出ているらしく、最近のアズフィール様は夜の施術の際、マッサージに加えて灸を所望してくることが多かった。
 ……ここのところは、かなり大変そうね。体を壊さないといいけれど……あ! そうだわ。乾燥させたラベンダーを少し分けてもらって、もぐさに配合してみようかしら。
< 202 / 340 >

この作品をシェア

pagetop