秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 ヴァーデン王子の表情が少し気になったけれど、先にアポロンの背に乗りあがったアズフィール様に手を差し出され、私はその手を取った。
 逞しい腕にグッと引き上げられて、アズフィール様の胸にすっぽりと抱きすくめられる。すべての感覚がアズフィール様に向かい、ヴァーデン王子に対して覚えた僅かな違和感は、意識の片隅に消える。
 私はアポロンの背上でアズフィール様と身を寄せ合い、普段よりも速い鼓動を感じながら、青空へ飛び立った。

***

 アポロンの背に乗って、メイサを両腕に抱いて、心地いい春の風を頬に受けながら空を飛ぶ。斜め後ろには、やや硬い表情でジジに跨るヴァーデンの姿があった。
 ……俺は二度、メイサに救われたな。
 一度目は、七歳の時。あの時の金髪の少年がまさかメイサだとは夢にも思わなかったが、一旦そうと知れば、なぜ気づかなかったのかが不思議なくらいストンと納得もできた。
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