秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官（※その実態はお妃候補）に任命されました！

　……おそらくだが、男性は腹部に受けた落石によって内臓を損傷している。
　認識した瞬間、体の芯がキンッと冷え、鼓膜で血の巡る音がドクンドクンと煩いくらいに響いていた。
「本当にすみません。私としてもお力になりたいのは山々なのですが、ここに医療を提供する体制はないんです。スタッフは調理や清掃といった生活介助をする者が中心で、皆、医療処置はできないんです」
　受付の女性もやるせなさを滲ませていた。
　急いで医師を捜して、開腹手術をしないと男性の命が危ない。ただし、この世界に超音波検査やCT検査なんてないから、医師が勘と経験であたりをつけて開腹し、止血を試みるしかないのだ。予後は不良で、救命が叶っても後遺症などで苦しむケースが多かった。
「仕方ない。貴族たちの別荘地の方を回ってみよう。もしかしたら医師を伴っている人がいるかもしれない。いなくとも、ドラゴンで医者を呼んできてもらえるよう頼んでみよう」
　……どうしよう。私なら、男性を助けることができるかもしれない。