秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
だけど……っ! 治癒チートを自覚した後、私は灸頭鍼の施術は一回も行っていなかった。自覚する以前にしても急性の傷病者とは縁がなかった。
私がこれまで治癒チートで完治させたのは祖父の腰痛をはじめ、四十肩や通風といった関節痛が数件と膀胱炎だけ。死に至るほどの傷病者に治癒チートを施したことはなかったのだ。
恐れや不安、ありとあらゆる感情が一気に胸に押し寄せる。だけど、思考の嵐が吹き荒れる脳内とは対照的に、手足も唇も、全身がまるで凍り付いてしまったかのようだった。
私は硬直したまま、ただ立ち尽くしていた。
「そうね、急ぎましょう!」
「ああ!」
ご主人が男性を担ぎ直し、踵を返す。
その衝撃で男性は低く呻き、俯いていた顔をクッと上向けた。ほんの一瞬、男性の吸いこまれそうに深いグリーンの瞳と視線が合った。
っ!! 胸の奥、深いところで火花が散った気がした。
次の瞬間、私は足を踏み出していた。
「待ってください! 応急処置だけですが、私にやらせてください!」
私がこれまで治癒チートで完治させたのは祖父の腰痛をはじめ、四十肩や通風といった関節痛が数件と膀胱炎だけ。死に至るほどの傷病者に治癒チートを施したことはなかったのだ。
恐れや不安、ありとあらゆる感情が一気に胸に押し寄せる。だけど、思考の嵐が吹き荒れる脳内とは対照的に、手足も唇も、全身がまるで凍り付いてしまったかのようだった。
私は硬直したまま、ただ立ち尽くしていた。
「そうね、急ぎましょう!」
「ああ!」
ご主人が男性を担ぎ直し、踵を返す。
その衝撃で男性は低く呻き、俯いていた顔をクッと上向けた。ほんの一瞬、男性の吸いこまれそうに深いグリーンの瞳と視線が合った。
っ!! 胸の奥、深いところで火花が散った気がした。
次の瞬間、私は足を踏み出していた。
「待ってください! 応急処置だけですが、私にやらせてください!」