秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 イザベラ様は手に付いた陶器の欠片を忌々しそうに払うと、頭を掻きむしった。
「おのれアズフィール……っ!!」
 半狂乱になって叫ぶイザベラ様の姿は、もう普通じゃなかった。
 イザベラ様が声にならない声で何事か喚きながら、突然カッと目を見開いた。その瞬間、私は強烈な違和感を覚えた。
 ……なに? イザベラ様の纏う空気が変わった……?
 イザベラ様がふわりと表情を緩ませたかと思えば、この場に不釣り合いな優しげな声で、意味のわからないことを言いだす。
「……もういいじゃないの。こうして無事にアズフィールが見つかったんだもの、ねぇ? さぁ、みんなで帰りましょう」
 私には意味をなさない言葉だった。ところが、耳にしたアズフィール様の体が不自然に強張ったのを感じた。もしかすると、アズフィール様にはなにか意味のある言葉だったのかもしれない。
 イザベラ様は頭を掻きむしっていた手を解くと、手すりを掴んでいたアズフィール様の左手をそっと撫でた。
「ッ!!」
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