秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 俺はベッドのすぐ近くの文机に向かい、中の引き出しから木彫りの髪飾りを取りだす。
 振り返ると、メイサに向かって髪飾りを差しだした。
「この髪飾りなら施術の邪魔にはならないだろうと思った。専属女官としてやって来た日に、君に伝えた言葉を取り消す。市井から王宮に場所を変える必要はない。これをつけて、今まで通り鍼灸を続けたらいい。王宮でも、市井でも、存分に駆け回ってくれ」
 メイサは目を真ん丸にして、俺と俺の手の中の髪飾りを交互に見つめていた。
「君がいい。俺には君でないと駄目だ。俺の隣には君しかいない」
「……私、どうやら初心を忘れていたみたい」
「ん?」
「決めていたのよ、『後悔しないように生きよう』って。今、正直にならないと絶対に後で後悔するわ」
 メイサがトンッと俺の胸に飛び込んできて、頬を紅潮させて俺を見上げた。
「……アズフィール様、私あなたが好き。私を奥様にしてください!」
 耳にした瞬間、熱い歓喜が胸を焼く。
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