秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 私が返事をすると、すぐにご主人たちが部屋に入ってきた。
「ああ、ずいぶん顔色がよくなっている!」
「本当ですね! 呼吸も穏やかになっています」
 男性の顔をひと目見て、ご主人と受付の女性はホッとした様子で口にした。
「それにしたって、さっきまでの苦しそうな様子がまるで嘘みたいだ」
 ご主人の台詞にドクンと脈が跳ね、冷や汗が滲んだ。
「開いていた肩の傷口をさらし布で固定したことで、痛みが楽になったんだと思いますよ」
 私は内心の動揺をひた隠し、整然と告げた。
「なるほど」
 納得した様子で頷くご主人を見て、ホッと胸を撫で下ろした。
 さらにご主人は、思い出したように問う。
「あ! そういえば、腹の方も見ていただいたんでしょうか? 実は、この方が私たちを庇ってくださった時、左の脇腹にもろに石を受けていたように見えたんです。私と妻がザッと見た限りでは、特に出血などはしていなかったのですが」
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