秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官（※その実態はお妃候補）に任命されました！

「さて。宿だけでもたしか三軒あったはず。ロディウスが滞在しているのはどこだ？」
　アポロンの背からメイジーの町を眼下に見ながら、ロディウスの行動パターンを想像してみる。
　旅の醍醐味を『その土地の民に交じり、酒と郷土料理を共に楽しむことだ』と断言する豪放な男だ。そんな男が、貴族らが保養に集う別荘地エリアにある高級宿を好んで選ぶとは思えなかった。
「……間違いない。大衆の温泉宿だな」
　三軒のうちの一軒にピンとくる。俺は行き先を大衆の温泉宿に定めると、メイジー湖のほとりの拓けた草地にいったんアポロンを着地させた。
　貴族たちの別荘が集うエリアならともかく、町人らが行き交うエリアでドラゴン──それも極めて希少な金色ドラゴンを伴っていては嫌でも目立つ。アポロンの背からトンッと飛び降りて、その鼻先を撫でながら告げる。
「三時間後、またここで合流しよう」
「ギュァ」