秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 金色ドラゴンの中でも破格に賢いアポロンは、俺の言葉に「承知した」というようにひとつ嘶き、再び翼をはためかせ、空に飛び立っていった。
 身ひとつになった俺は、羽織っていたマントを脱いで小脇に抱えた。マントの下はあえてシンプルなシャツとズボンを選んで着用しており、難無く町人に紛れることができた。
「前回の来訪は一年前になるか。懐かしいな」
 メイジーの町は、ロディウスに連れられて何度か訪れたことがあった。その度に大衆酒場や食堂を梯子して連れ回された。おかげで俺も、自ずとこの町のこと……それも町人らが暮らす居住エリア内のことには詳しくなっていた。
 目指す大衆の温泉宿があるのは町の外れだ。源泉かけ流しの温泉を売りにしており、エイル連山の切り立った山肌を背にしてポツンと建っていた。
 俺は切り立つ崖に沿うように整備された山道を歩きだした。
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