秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 左側の腹部に感じていた痛みも、今はもう俺を苛むことはない。全身を襲う異様な虚脱感と悪寒が、迫る死期を伝えていた。
 助けたことに後悔はない。第一王子である俺が死ねば少なからず混乱はあるだろうが、最終的には降嫁せず王家に残っているイザベラ姉上が王太女となることで落ち着くだろう。エイル神聖王国では女性に王位を認めていないが、俺が生まれる前は暫定的に女王を承認する方向で最終調整が進んでいたのだ。
 ……ふむ。そう考えると、俺の死はエイル神聖王国にとってむしろよかったのかもしれないぞ。
 掠れ掠れの意識の片隅で、他人事のように一歩引いたところから己の死について考察していた。
 これまで誰にも明かしたことがなかったが、俺には王として……いや、男として致命的な欠陥があった。俺が王になっても、世継ぎの誕生がのぞめない。そうなれば俺が王位に就いたとしても、遠からず王家は難しい決断を迫られることになっただろう。
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