秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「ドクドール。休暇が明けたら、俺のワインセラーに来い。どれでも好きな酒を持っていけ」
「……一本ですか?」
 狼狽しつつも、しっかり食えない質問をしてくる老医師に、俺は苦笑した。
「好きなだけ持って行け。その代わり、……わかっているな?」
「よろしいでしょう。私は滞在先の町で見知らぬ青年を助けただけでございます」
 無類の酒好きのドクドールは、ほくほく顔で頷いた。
 そうして処置のため夫妻に退席してもらった部屋で、老医師から処置を受けた。左肩を数針縫ったが、およその想像通り傷は骨や筋にまでは達していなかった。
「消毒と包帯の交換は毎日欠かさずに。抜糸は一週間後、私の医務室で行いましょう」
「すまんな」
 俺が破れてしまったシャツの代わりに借りたシャツを羽織ろうとしたら、ドクドールに止められた。
「一応腹部も診ておきましょう」
「いや、腹はいい」
「いけません。ご夫人の話では、肩よりもひどく石を受けていたとのこと。診せてください」
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