秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「それから俺は、君の笑顔が見たい──!」
 彼女はどんなふうに笑うのだろう。桜色の頬を緩ませ、暗褐色の瞳をやわらかに細くするのだろうか。栗色の髪を揺らして、コロコロと笑い声を立てるのだろうか。
 ……不思議だった。彼女が触れても苦しくなかった胸が、彼女のことを想像するとキュウッと軋みを上げ、ジクジクと熱を持つ肩の怪我よりももっと熱く疼いた。
 だけどこれらは、決して不快なものではない。
 かつてないくらい、心がわくわくしていた。
 将来の王として、不足なく与えられてきた。本当の意味で、自分から望んだ物などなにひとつなかった。それが今、はじめて欲しいと思った。
 彼女のことが知りたい! 俺は彼女と共に過ごす時間が欲しい──!
 期待と興奮で高鳴る鼓動を抑えながら、俺の世界が鮮やかに色づき始めるのを感じていた。

***

 メイジーの町を訪れた日から三日が経った。
「メイサ? おい、メイサ?」
「んっ?」
 祖父の呼び声で、束の間の物思いから今に意識が戻る。
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