秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「燃え終わっているようだぞ」
 ……いけないっ!
「ごめんお祖父ちゃん! 熱くなかった?」
 祖父の指摘でハッとして、台座ごと燃え終わったお灸を取り去る。
 お灸をしている時は、目を離さないのが基本。施術中にぼんやりするなんて、とんだうっかりだ。
「あぁ、気持ちよかったぞ。それにしても、最近のメイサは心ここあらずのようだな」
「うっ……お灸中にほんとに面目ない」
「はははっ。それは構わんが……さては、誰ぞいい相手でもできたのかな?」
 脳裏に、ブラウンの髪にグリーンの瞳をした青年の姿がよぎる。私は慌てて振り払い、少し早口で答える。
「ち、違うったら。ただ、ぼんやりしちゃってただけ。そんな人はいないよ」
 青年は、メイジーの町で灸頭鍼の処置をした相手だ。私が彼の命を助けたのだから、その後のことなど、いろいろ気なってしまうのは仕方のないことだろう。
 ……そう。だから決して男性自身について、どうこう思っているわけじゃない……うん。
「そうかね」
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