秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「そうそう。それよりお祖父ちゃん、首筋から前肩にかけて張っているって言ってたじゃない。普通は、皮膚の薄い鎖骨のあたりにはあんまりしないんだけど、今日は前側からも軽くお灸をして終わりにしようか。ベッドに仰向けに寝てくれる?」
 肩の痛みに対する施術は、基本的に座った状態で行うことが多い。しかし今日は祖父の訴えを加味し、あえて提案した。
「おぉ、それはありがたい」
 私が告げると祖父は嬉しそうに椅子を立ち、すぐにベッドに移動した。
 祖父が仰向けに寝転がると、私は祖父の胸あたりまでタオルケットをかけて、右前肩付近の二カ所のツボに台座を置き、小さめのもぐさでお灸を据えた。前肩……特に鎖骨から首の近くは皮膚が薄く、他の部位より温感を得やすい。火をつけると、今度こそ慎重にお灸の燃焼を見守った。
 そうして、ちょうどいい具合にもぐさに熱が伝わってきたタイミング──。
「ねぇお祖父ちゃん、なんだか下がずいぶんと賑やかじゃない?」
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