秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
居間の時計は、まだ七時を少し回ったところだった。父は鍼灸専門学校時代の知り合いからお客を紹介してもらい、呼ばれれば何時でも出張の施術に出向いていた。
治療院をただ開けているだけではお客さんはこない。けれど父は営業のようなことが、あまり得意ではないらしい。さらに数年前、向かいに人気の整形外科クリニックができてから、ますます経営は苦しくなっているようだった。
『みんなが整形外科のお医者さんを頼るのは当たり前だよ。……鍼灸とかさ、ダサいもん』
父がいなくなった二階の居間で、ぽつりとつぶやいた。私自身、鍼灸には懐疑的だった。
体の上に灸を据えたり鍼を刺したりするのはなんとなく怖く感じていたし、効果にしても先進医療には敵わないだろうという思いがあった。所詮、気休めだろうと、内心で父の仕事を侮っていた。
だけどその日の晩、私の考えは一変する。
『芽依紗、今日のハイキング登山はどうだった……って、なんだ? ずいぶん疲れてるんじゃないか』
治療院をただ開けているだけではお客さんはこない。けれど父は営業のようなことが、あまり得意ではないらしい。さらに数年前、向かいに人気の整形外科クリニックができてから、ますます経営は苦しくなっているようだった。
『みんなが整形外科のお医者さんを頼るのは当たり前だよ。……鍼灸とかさ、ダサいもん』
父がいなくなった二階の居間で、ぽつりとつぶやいた。私自身、鍼灸には懐疑的だった。
体の上に灸を据えたり鍼を刺したりするのはなんとなく怖く感じていたし、効果にしても先進医療には敵わないだろうという思いがあった。所詮、気休めだろうと、内心で父の仕事を侮っていた。
だけどその日の晩、私の考えは一変する。
『芽依紗、今日のハイキング登山はどうだった……って、なんだ? ずいぶん疲れてるんじゃないか』