不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「はい。もう少しだけ見ていていいですか?」
「世界遺産でなければいつでも見られるように買ってやりたいが、そうもいかないからな。まだ時間には余裕があるから、好きなだけ見るといい」
許可してもらえてありがたいが、今、彼はすごいことを言わなかっただろうか。
思わず天井から斗馬さんに目線を移動させる。
「今、買ってやりたいって言いました?」
「ああ、言った。音楽堂のホールを買って、夫婦ふたりだけでオーケストラ鑑賞というのもいいと思わないか?」
「ぜ、全然思いません! 素晴らしい演奏をふたりだけで独占するなんてもったいない」
「埋まっていない客席の分も金は払うさ」
「まぁ、それならいいでしょう……ってなりませんから!」
冗談だとしても、浮世離れしすぎた発想に思わず唖然とした。
斗馬さんはクスクスと笑って、私の耳元に唇を寄せる。
「そういう口説き文句で喜ばない千帆が、俺は好きだよ」
「きゅ、急になに言ってるんですか」
「別に急じゃない。昔からずっと、お嬢様ながら地に足の着いた考え方をする千帆に惹かれていたんだ」
「斗馬さん……」
甘い微笑みに、胸がトクンと鳴る。旅行中は彼を疑わずにいようと決めているため、簡単にときめいてしまう。もちろん、その裏には切なさもついて回るけれど――。